私は貴方のことを想うと

自分の仕事でさえ手につかなくなってしまう




なのに




一日に一回きりしか

貴方に逢うことができないなんて




あぁ 光り輝く貴方

どうか私の心も照らしてください












the moonlight












「きらきら光る〜♪ 夜空の星よ〜♪」

一人の少年は、二階の窓から顔を出し、夜空を見上げていた。



「どうしたんだい、ぼうや?そんなに嬉しそうに唄って。」

夜の街を明るく照らす月が、少年に尋ねた。



「えへへ。今日はね、いい事があったの。」

少年は嬉しそうに語り出した。

「ぼくね、今日でえんぴつを持って行くのを忘れちゃったんだ。
どうしようって困ってたら、隣の席のさっちゃんっていう女の子がね、
“はい”って言ってぼくにえんぴつを貸してくれたの。」

「そう。よかったわね。」




そう言う少年は、誰にも負けないくらい輝いていて。


私も彼のように美しく輝けたらいいのに。

そう、思った。





「君は、そのさっちゃんっていう女の子が好きなんだね。」

図星をつかれたのであろう、少年はまんまるいほっぺを赤く染めた。



「うん。ぼく、さっちゃんが大好き!!」

窓の額縁の下に肘をついて、少年は頬杖をした。




「ねぇ、ねぇ、お月さま。あなたには好きな人はいないの?」

「私かい?もちろん、いるよ。」



パァァと少年の瞳は輝きを増し、声を弾ませた。



「だれ?だれ?ぼくの知ってる人?」

「そうよ。その人はね、いつも光り輝いている人なんだよ。
そして、私のように皆を照らし続けている人でね、とても素敵なの。でも・・・・」





月の表情が、曇り始めた。


だんだんと、街の明かりが暗くなる。






「その人には、一日一回しか逢うことができないの。
私が、貴方たちのもとへ顔を出す、その瞬間だけ。」







ぽた。


ぽたた。ぽたた。







月は、とうとう泣き出してしまった。

街は、より一層暗くなり、雨が降り出した。





「もしかして・・・・お月さまの好きな人って、太陽さん?」

「うん。そうだよ。」




それを聞くと、少年は にぱっ と笑った。





「泣かないで、お月さま。
ぼくね、お月さまに尋ねた質問と同じのを太陽さんに聞いたんだ。
そしたら、太陽さんね・・・・・・・」



月は、すすり泣きながらも、少年の答えを待った。










「お月さまのことが好きだって。」







月の涙がぴたっと止まった。










え・・・・?




本当に・・・・・・・??









これで涙を拭いて、と少年は月にハンカチを渡す。




「そのことを伝えてくれって、太陽さんに頼まれてたの。

太陽さんったら、恥ずかしがり屋みたい。

それに、なかなかお月さまと逢うことができない、って悩んでたみたいだから、僕が代わりに。」





よかったね、少年は月にウィンクした。




月のほっぺも、さっきの少年のほっぺの赤さに負けないくらい、赤く染まっていた。










いつのまにか、降り続けていた雨は止み


街はいつにも増して、明るく月明かりで照らされていた。








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自分の世界に入ってしまいました。

前から、太陽と月の話を書いてみたいなぁ、なんて考えて書いちゃった感じです*(コラ